交通事故の怪我、不意の治療費打ち切り!? どう対処したら?

思えば3カ月前。
あなたはご自身の車を運転中、交通事故に見舞われました。赤信号の交差点で停止中、後続車に追突され、車の後部は破損。追突された衝撃で、あなたも首と右手の指にけがを負い、そのまま入院という事態に発展しました。
医師の診断は、頸椎捻挫と右手中指不全骨折。
今は、休業して治療に専念する日々が続いています。
ある日、加害者側の保険会社から、一本の電話が入りました。
「そろそろ、症状も落ち着かれたのではないでしょうか。こちらとしましても、治療費の支払いを終了したいと考えております。その旨、よろしくご検討ください。」
突然の治療費打ち切りの知らせに、あなたは戸惑います。
「まだ、首のしびれや痛みは治まっていないし、指のリハビリもこれからなのに、今、治療を打ち切られたら、たまったものじゃない。第一、医者からは、何も言われてないし・・・」
このようなケースは、往々にして見られます。
保険会社からの一方的な宣告に憤り、今後の治療に不安を隠せない方も多くいらっしゃるでしょう。いざ、前述のような状況に陥っても、慌てないように、交通事故の被害者として、事前に身につけておくべき知識があります。
この稿では、交通事故による受傷において、治療費にまつわる事情について見ておきましょう。

治療費はどのように、負担されるのか

交通事故に見舞われ、負傷したけが際は、症状が重傷であるなら、現場から病院まで、救急車で搬送され、そのまま入院ということもあり得ます。
この際、加害者が加入している任意保険会社から医療機関に対し、直接、治療費を支払ってもらう事が大半です。このような任意保険会社の対応を、「一括対応」と言います。
もし、加害者が任意保険に加入していないなら、一時的に被害者が自己負担し、後になってから加害者本人あるいは、加害者が加入している自賠責保険会社へ請求する事になります。
ではなぜ、任意保険会社がこのような対応を行わなければならないのでしょうか?

その前に、一括対応というシステムについて、ご説明します。

自賠責保険と任意保険はどう違う?

自賠責保険は一般的には、強制保険とも呼ばれ、この保険に未加入でいると、自動車の運転が法律で禁止されており、違反者には、罰則が設けられています。自動車の所有者に対しても、自賠責保険への加入は義務付けられています。自賠責保険は、被害者が被った人身事故に対して、最小限度の補償をする事を目的としています。法律に規定された支払基準に従い、支払限度額まで、損害賠償金の支払いを行います。限度額についても、色々あります。受傷から症状固定までに被害者が被った損害、主に治療費や休業損害などについては120万円まで。後遺障害についての損害では、後遺障害等級に応じて75~4,000万円まで。死亡慰謝料については、上限が3,000万円までと決められています。
一方、任意保険については、自賠責保険では負担しきれない部分を賄うため、運転者が任意で加入する保険の事です。通常、自動車の所有者は大半が、加入しています。もし、交通事故の加害者が任意保険に加入していない時は、自賠責保険ではカバー出来ない損害賠償を、加害者自身が負担する事になってしまいます。
仮に治療費として300万円かかったとしたら、自賠責保険の支払限度額は120万円ですから、自賠責保険で支払われる金額は120万円です。残りの180万円は、加害者自身が支払う事になります。

任意保険が傷害に関する損害の支払う訳

上記のように、自賠責保険と任意保険とでは、支払いに関しての守備範囲が異なります。ではなぜ、任意保険が治療費の支払いを、肩代わりするのでしょうか?
被害者が自己負担した治療費及び休業損害等を、自賠責保険会社に請求をする事は可能です。この際、自賠責保険では支払われなかった損害分を、任意保険会社へ請求することになります。しかし、被害者自身にとっては、自賠責保険会社と任意保険会社の両方への請求となるため、非常に手間のかかる作業になります。そこで、任意保険会社は被害者に対して、自賠責保険会社が負担する分も含めて、治療費や休業損害等を一括して支払うのです。後に、任意保険会社が自賠責保険会社に対し、立て替えた負担分を請求することになっています。

一括対応を代行する保険会社は、当初、被害者に対し、同意書の作成を求めます。この同意書により、加害者側の任意保険会社は、医療機関から情報の提供を受けることが出来るのです。任意保険会社が同意書を病院に提出する事により、被害者のけがの治癒がどれくらい進んでいるか、把握する事が可能になります。入院期間の長さは、後に加害者側に請求する入通院慰謝料の金額に影響してきます。主治医の見立てで、これ以上は必要ないと判断されるまで、入院治療は継続される事になります。

症状固定までは治療は継続する事

被害者が通院治療を開始してから3~4カ月が経過したころ、加賀者が加入している任意保険会社から、治療費の支払いの打ち切りを告げる電話がかかってくる事があります。先に触れたように、保険会社が医療機関に治療費を支払う時には、初めに被害者から、治療の状況や症状の進展具合などの医療情報を、任意保険会社が取得する事を許可する同意書の提出を求めます。その後、2~3カ月おきに病院から保険会社に対し、診断書と診察報酬明細書が提出されますが、保険会社はそれらの書類を、自社で契約している医療関係者に確認させ、治療状況を絶えず判断しているのです。そして、けがが既に治癒しているか、症状が終了の段階を迎えているかを見極めた場合は、任意保険会社は被害者に対し、治療費支払いの打ち切りを宣告してきます。治療が終了段階を迎えている事を、医学用語で「症状固定」と呼びます。因みに症状固定とは、医学的な見地から、けがの症状に著しい進展が見られず、リハビリや投薬を行った時だけ症状が回復し、やめると症状がぶり返し、一進一退を繰り返す状態を指します。ただこの治療費打ち切り通告は、あくまで保険会社の独断独であって、一方的に宣告してきたとしても、慌てて応じる必要はありません。
ここで間違わないで頂きたいのは、任意保険会社が通達しているのは、「治療費打ち切り」であって、「治療の打ち切り」ではないという事です。
本来、これからも治療が必要か、それともけがが症状固定の段階を迎えようとしているのか、判断するのは被害者の主治医と被害者自身です。
ではなぜ保険会社がこれほどまでに、症状固定に固執するのでしょうか?それには、ある意図が存在するからです。けがの症状に明らかな改善が見られない場合、任意保険会社は延々と治療費を加害者に払わせ続ける事を良しとしません。それよりは一旦、治療費という名目での支払いは打ち切り、もしその後も、被害者が症状を訴えるのであれば、それから先は、「後遺障害」として損害賠償の対象と捉え、当該案件の早期解決を図ろうとしているのです。
ここで、医師から症状固定の認定を受けるまでと後では、請求出来る項目が違ってくる事を頭に入れておいてください。症状固定前であれば、治療費や入通院慰謝料、休業損害などが「傷害部分」という項目に入ります。一方、症状固定の診断が出た後は、後遺障害等級の認定が得られれば、「後遺障害部分」として、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求する事が出来ます。
もう一度、強調しておきたいのは、加害者側の任意保険会社が治療費支払いの打ち切りを告げてきても、これに応じる必要はないという事です。打ち切りを宣告してきた段階でも、痛みやしびれなど、自覚症状が続いていれば、医師と相談の上、「症状固定はまだ、時期尚早」との見解を示し、治療を継続する事です。その診断内容をもって、任意保険会社と交渉しましょう。症状固定まで、治療費の支払いを継続してもらうよう要求すれば、そのまま、治療費の支払いを続けてもらえる場合もあります。
しかし、けがの症状が未だ症状固定の段階ではない、と主治医が診断したにもかかわらず、任意保険会社が治療費支払いを打ちきった場合。更には、治療費支払いの再開に向けての交渉にも応じないなど、これ以上任意保険会社からの治療費の支払いが受けられないのであれば、被害者自身の健康保険を利用した通院治療に切り替える事も検討に値します。被害者が立て替えた分は、症状固定後、示談金交渉する際、加害者側の保険会社へ上乗せして請求すれば良いでしょう。

通院は最低でも、6カ月は続ける事

加害者側の任意保険会社が、治療費打ち切りを宣告してくるのは、大体、交通事故により受傷してから3カ月後くらいからです。勿論、けがの症状が急速に快方に向かい、3カ月を待たずに完治してしまった場合。あるいは、医師からも症状固定との診断を受け、治療の終了を勧められたとすれば、保険会社の申し出を受け入れても良いでしょう。
しかし、未だに自覚症状が治まらず、医師からも治療の継続が望ましいとの意見を貰った場合は、ためらわずに治療を続けてください。
少なくとも、6か月間は。
この6カ月という期間に、意味があるのです。
けがの治療が症状固定を迎え、その後も後遺症状が残り、仕事にまで影響するような深刻な事態を招いた場合。被害者は加害者側に対し、「後遺障害慰謝料」という名目で損害賠償の請求を行う事が可能です。そのためには、第3者機関からの、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。そして、この等級認定を受けるには、最低でも、6カ月以上の通院が義務付けられています。もし、6カ月を待たずに、加害者側の任意保険会社から治療費打ち切りを告げられたら、「最低、6カ月間は通院しないと、後遺障害等級の認定は受けられませんよね?」と反論してみてください。任意保険の方では、あなたがそのような知識は持ち合わせていないと、高を括って、早い段階から症状固定の申し出を行っている訳です。従って、そのように反論されれば、態度を変えて、最低6カ月間の、治療費支払い継続には応じてくる可能性は高いでしょう。

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